山王寺本郷神楽社中の仕掛け面「〈三韓〉大史面」(手前)を紹介する石山専門学芸員=県立古代出雲歴史博物館 県東部に伝わる出雲神楽の魅力を、史料や面などの道具類を通してひもとく企画展「出雲神楽」が24日、県立古代出雲歴史博物館(出雲市大社町杵築東)で開幕する。5月21日まで。

 島根県は全国でも神楽が盛んな地域で、県東部の出雲地域では73団体が出雲神楽を伝承している。面を付けずに儀式的な舞を舞う「七座」、能楽に由来する演目「式三番(しきさんば)」、神話などがモチーフで面を付けて舞う「神能」という3部構成となっているのがその特徴。
 同展では、出雲神楽の歴史や特色を物語る史料や、地域色豊かな神楽面など、同市指定有形民俗文化財を含む桃山時代から現代までの約240点を展示。地域に根差した芸能として今に生きる出雲神楽の姿に迫っている。
 会場では、出雲神楽の成り立ちと広がりや、人びとの祈りや願いに応じて行われた神楽、地域ごとの歴史や特色の三つのパートに分けて展示。
 このうち、成り立ちと広がりを紹介するコーナーでは、佐太神社(松江市鹿島町)の「佐太神能」が、神職が京で学んだ能を従来の神楽に取り入れたもので、これが出雲地域全体へ広まっていったことを紹介している。
 「神能」という語の初出史料「当社下遷宮次第之事」(江戸時代)や、神能成立以前から同神社で舞われていた「猿田三番の舞」の室町時代の「猿田彦矛(ほこ)の面」(初公開)などが並ぶ。
 また、出雲神楽を「松江市」「雲南市~奥出雲町」「出雲市」「飯南町~石見東部」四つのエリアに分けて取り上げ、地域ごとの特色を紹介するコーナーでは、各地域で使われるバラエティーに富んだ「大蛇(おろち)」の面や衣装を多数展示。
 両目の他に額に14の目を持つ赤い鬼面の大蛇面や、蛇頭に七つの小さな大蛇が付いた珍しい形態の蛇頭(出雲市多久谷町旧蔵、現・出雲市蔵)、幕蛇の中に3人の舞手が入って舞う奥飯石神楽保存会の幕蛇など、地域ごとに多種多様な大蛇があり、大切に受け継がれていることが紹介されている。
 同館の石山祥子専門学芸員は、「普段は間近で見られない、実際に使われているものを一堂に集めて展示したので、ぜひ見比べてみてほしい」と話していた。
 観覧は、午前9時(3月24日のみ10時)から午後6時まで。会期中、4月18日と5月9日が休館。要入館料。問い合わせは、同館(電話0853・53・8600)へ。

<写真:山王寺本郷神楽社中の仕掛け面「〈三韓〉大史面」(手前)を紹介する石山専門学芸員=県立古代出雲歴史博物館>