新しい技術を従業員が身に付けるリスキリングに積極的に取り組んでいる県内企業は、2割程度にとどまっていることが、民間信用調査会社、帝国データバンク松江支店の調査で分かった。人手不足を乗り切るために、従業員の生産性を上げるスキルアップが求められる中で、ノウハウの不足や人員、時間の余裕がない県内企業の実態が浮き彫りにされた。
 調査は、県内に本社がある企業290社を対象に昨年10月実施。うち34%に当たる99社から回答を得た。
 それによると、リスキリングの意味を理解し、従業員のスキルアップなどに取り組んでいる企業は8社と全体の8%。リスキリングに「取り組みたい」と積極的な姿勢の企業を合わせても23社と23%にとどまった。同社が実施した同じ調査の全国平均26%に比べても低かった。
 これに対し、「言葉の意味は知っているが、取り組んでいない」46社(47%)、言葉や意味も知らない企業合わせて21社(21%)を含め、リスキリングへの消極派、無関心派を合わせて8割近くに達した。
 リスキリングに取り組んでいない理由として「必要なノウハウがない」35社(35%)を最高に、対応できる人材や研修などに充てる時間の不足を上げる企業が多かった。「どこから手を付けていいか分からない」「成果や収益が見込めない」などリスキリングに戸惑ったり、効果に懐疑的だったりする声もあった。
 中には、リスキリングを通じて従業員が新しい技術を習得しても、転職されては何をやっているか分からない、と逆効果を懸念する企業も。スキルアップを通じて転職のチャンスを広げる側面も持ち合わせているからだ。
 リスキリングに積極的な企業の中には、社員の資格取得に奨励金を支給したり、スキルアップのため、社員間で相談できる体制をつくったりするなど「人的投資」の考え方を重視しているところが多い。
 同支店は「従業員のスキルを把握するため、リスキリングを導入しているところが多い。経営層の理解や推進力が求められる」と話している。

 ※リスキリング デジタル化など新たな技術を習得するため、働きながら学習すること。