本年度の県最低賃金を決めた審議会=松江市向島町の島根労働局 パートやアルバイトを含む全ての労働者に適用される県内の最低賃金が近年、大幅に引き上げられているのに伴い、国の最賃支援の助成金を利用する事業所が急増し、過去最高となっている。人件費の上昇を生産性向上で吸収する設備投資や非正規労働者の賃金引き上げを支援する制度を活用し、最賃引き上げに対応しようとする企業の姿勢を浮き彫りにしている。
 県内の最賃は、人手不足を反映して2021年から急上昇し、今年は時給で58円アップして962円と過去最高を更新。10月12日から新しい最賃が適用される。5年前の改定後の時給790円を172円上回り、時給1000円が視野に入っている。
 これに対し、県内企業は危機感を強め、国の助成制度に着目。労働行政を担当する厚生労働省島根労働局に申請や問い合わせが急増している。最賃引き上げを支援する国の助成制度は、業務改善助成金とキャリアアップ助成金の2本柱から成る。
 このうち業務改善助成金は、最低賃金引き上げと設備投資を行った中小企業を対象に、引き上げ額などに応じて600万円を上限に助成。例えば、従業員30人の事業所で5人の時給を45円引き上げて設備投資をした場合、最大100万円が支給される。
 一方、キャリアアップ助成金は、パートやアルバイトなど非正規雇用の労働者の賃金を底上げする狙いで、中小企業だけでなく大企業も対象となる。基本給を3%以上5%未満上げた場合は1人当たり5万円、5%以上引き上げた場合には同6万5000円が一時金として支給される。例えば、非正規労働者10人の賃金を5%以上引き上げると、65万円が支払われる。
 島根労働局の調べによると、業務改善助成金の申請は2022年度67件だったのが、23年度は過去最高の190件と3倍近くに増え、このうち160件が助成を受けた。本年度の最賃が決まった9月以降も問い合わせが相次ぎ、島根労働局は「この調子でいくと、申請件数は過去最高を更新するのでは」とみている。
 キャリアアップ助成金も20年度から22年度までは件数6~14件、金額126万~579万円で推移していた支給実績が23年度は過去最高の20件、支給額913万円に急増。本年度はこちらも件数、金額とも過去最高を更新する見込み。
 低賃金で働いている労働者の賃金を底上げするのが、最賃制度の役割。都道府県ごとに毎年改定されるが、島根県の引き上げ幅は近年全国でもトップクラス。最近の最賃の動向について経営側は「従業員を引き留めるための防衛的引き上げ」と受け止めている。
 同局は「最賃は地域の労使代表らで決められるが、人手不足が深刻化する中で賃金の引き上げは若者の県外流出食い止めにつながるのでは」とみている。

<写真:本年度の県最低賃金を決めた審議会=松江市向島町の島根労働局>