回復の足取り鮮明に/実質賃金上昇が鍵/日銀松江短観
2024年07月02日
日銀松江支店が1日公表した今年6月の山陰の企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を示す業況判断DIは、全産業でプラス11と前回3月調査を5ポイント上回った。景気が良いと感じる企業が過半となるプラス判断は7四半期連続。製造業、非製造業とも景況感は上向き、コロナ禍からの景気回復の足取りが一層鮮明となっている。このうち製造業のDIは、マイナス2で前回のマイナス5から3ポイント改善。新車の登録台数が増えるなどした輸送用機械が大幅に判断を引き上げた。ダイハツの不正認証問題による生産、出荷停止の影響がなくなったことが要因とみられる。電気機械、木材の業績も上向いた。
非製造業DIも前回のプラス12から17に伸びた。小売りが判断を引き下げたほかは大半の業種で引き上げ、宿泊・飲食サービスのDIはプラス44まで高まった。小売りの判断引き下げの理由は調査では明らかにされていないが、6月から松江市にオープンしたスーパー、マルイに客足が集中した影響が周辺店舗に広がっている可能性がある。
中小企業の当面の経営を左右する価格転嫁の動向を示す販売価格DIは、プラス29と前回と比べ4ポイント上昇。製造業は10ポイント、非製造業2ポイントそれぞれ前回を上回り、遅れていた製造業の価格転嫁がここにきて進んでいることをうかがわせた。
先行き9月のDIは、全産業でプラス11。製造業はプラス3と水面上に浮上し、非製造業はプラス16を見込んでいる。
同支店の大関雄資支長は「物価高が消費を冷やす恐れがあり、物価上昇を上回る賃上げを実現できるかどうかが鍵となる。海外経済の動きも注視したい」と話している。
調査は、島根、鳥取両県の主要企業173社を対象に今年5月下旬から6月下旬にかけて実施。全企業から回答を得た。業況判断DIは、景気を「良い」と答えた企業割合から「悪い」と回答した企業割合を差し引いた数値。