原材料価格などの上昇分を販売価格に転嫁する価格転嫁率は、県内企業で4割強にとどまっていることが、民間信用調査会社、帝国データバンク松江支店の調査で分かった。100円の原材料価格上昇に対し、40円強しか販売価格に転嫁できていないことになり、転嫁がなかなか進まない県内企業の実態を浮き彫りにした。
 調査は、県内企業269社を対象に今年2月に実施。うち37%に当たる99社から回答を得た。価格転嫁について調べたのは、2022年12月、23年7月に続いて3回目。
 それによると、原材料費などの上昇分を何らかの形で販売価格に転嫁した企業は全体の82%に当たる81社で、前回調査と変わらなかった。一方でまったく転嫁できていない企業は10%に当たる10社。前回の7%から3ポイント増えた。100%転嫁できたのは6社と全体の6%にとどまった。
 原材料費などコスト上昇分のうち、どの程度まで販売価格に反映できたかを示す転嫁率は43%で、前回の23年7月調査の52%から低下した。いったん値上げしたものの、その後の仕入れ価格などコスト上昇分を上乗せできず転嫁が遅れている状況を示す。
 価格転嫁について企業の声を聴いたところ、「値上げをし過ぎると売れない」「予約時点で1年先の料金が決まるため、その間の物価上昇を反映できない」「商品は価格転嫁できても修理などの人件費は転嫁できない」などが寄せられた。
 県内の春闘では、連合島根傘下の労働組合で近年にない賃上げが実現するなど賃上げムードが高まっているが、比較的規模の大きい企業が中心で、中小企業には浸透していないのが実情。
 同支店は「原材料やエネルギー価格が高止まりしているが、県内企業では価格転嫁が進んでいない。適正な価格転嫁を推進するため、継続した賃上げを後押しする政策の充実が欠かせない」と話している。