山陰合同銀行(本店・松江市)が、山陰両県の主要企業を対象にこの春の賃上げの意向を調査したところ、全体の8割が賃上げを実施し、基本給を引き上げるベースアップ(ベア)は平均3%近くを見込んでいることが分かった。昨年に引き続き、賃上げに前向きな姿勢を示しているが、その目的は、物価高の中で人材の流出を食い止めるための防衛的賃上げを示唆している。
 調査は、今年2月から3月にかけて山陰両県の主要企業1201社を対象にアンケート方式で実施。うち44%に当たる522社から回答を得た。
 それによると、全体の80%の企業が賃上げを実施すると回答。昨年の春闘が終わった9月に行った調査で賃上げを実施したと答えた企業の割合87%を下回った。しかし、今回の調査で「その他」と答えた企業10%の中には、賃上げに向けて検討中や交渉中も含まれており、同行は「検討中の企業を含めると、賃上げを実施する企業はさらに増える可能性が高い」とみている。
 賃上げの考え方については「業績の改善が見込まれるから」16%に対し、「業績が改善しなくても賃上げを実施する」が64%と大幅に上回った。業績にかかわらず賃上げを実施すると答えた企業割合は昨年秋の調査では54%だったが、今回はそれを10ポイント上回った。
 これについて同行は「賃上げは生産性向上や業績の範囲内でというのが経営側のこれまでの常識だったが、人手不足の深刻化でそんなことを言っていられなくなったのが実情では。賃上げしなくては企業の存続にかかわると危機感が強まっている」とみている。
 賃上げの方法では、勤続年数などに応じて給与を引き上げる定期昇給70%、ベアが54%。多くは定期昇給とベアを組み合わせて同時実施しているとみられる。ベアの平均は2・73%で昨年秋調査のベア実績2・86%をわずかに下回った。