山陰合同銀行が山陰両県の企業を対象に価格転嫁に関する調査を実施したところ、仕入れ価格の上昇などを販売価格に転嫁した企業の割合は8割近くとなり、同様な調査を実施した2年前の7割近くに比べ転嫁が進んでいることをうかがわせた。
 原材料価格上昇が下請けなど中小企業の経営を圧迫するなかで山陰両県の企業で価格転嫁が進んでいるのは、中小企業の賃上げを後押しするとみられ、今後の転嫁の浸透が山陰経済の好循環にもつながる。
 調査は、今年2月から3月にかけて山陰両県の主要企業1201社を対象にアンケート方式で実施。うち44%に当たる522社から回答を得た。
 それによると、価格転嫁を実施した企業の割合は全体の76%。質問内容は一部異なるものの、物価高の影響に関して2年前に実施した調査での66%に比べ、10ポイント上昇した。
 仕入れ価格の上昇分などに対してどの程度転嫁できたかの質問に対しては「6~8割程度」18%を最多に、「8割以上」16%、「2割未満」13%の順。「100%転嫁」が5%にとどまる一方、「転嫁しない(できない)」は16%あった。
 業種別では「8割以上転嫁」は卸売りで24%、製造業で19%。建設業では26%が「6割から8割」と答えた。小売業では「8割以上」「6割から8割」「転嫁しない」がそれぞれ16%と分散。転嫁しないのはサービス業の27%が最多だった。消費者に近い業種ほど転嫁に慎重な姿勢をうかがわせた。 価格転嫁を進めていくうえで必要な対策としては消費者に理解を求めたり、業界全体で価格転嫁の機運を高めたりするを合わせて55%と最多。政府が転嫁に向けて機運を高める回答も46%あり、下請けGメンなどによる指導・監督の強化15%を含め「お上の指導」を求める声も強い。
 賃上げとの関係では、賃上げを実施する企業の方が賃上げをしない企業より転嫁する割合が高い。
 調査結果について同行産業調査グループは「前回調査とは質問内容が異なる部分があるので正確なことは言えないが、傾向としては山陰でも一定の価格転嫁は進んでいる。賃上げとの関係では賃上げ原資として価格転嫁が必要となるが、人材引き留めのため業績にかかわらず賃上げを迫られている企業も多いため、賃上げとの相関関係は推測にとどまる」と話している。