日銀松江支店が1日公表した山陰両県の今年3月の企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は全産業でプラス6で、前回昨年12月調査に比べ6ポイント悪化した。ダイハツの不正認証問題や住宅着工の落ち込みなどで製造業で幅広い業種の業績が悪化、非製造業も物価高の影響もあってコロナ禍からのV字回復に頭打ち感が出た。
 製造業の業況判断DIは、前回と比べて6ポイント悪化してマイナス5と2四半期ぶりにマイナス圏に落ち込んだ。ダイハツ不正認証に伴う生産・出荷の停止で輸送用機械や鉄鋼の業績に影響が出たほか、住宅着工が落ち込んだことから、木材・木製品の受注が減少した。
 非製造業も前回比6ポイント悪化のプラス12。コロナ禍からV字回復してきた飲食・宿泊サービスが物価高の影響を受けて客足が落ち込んだほか、建設業も大型工事の減少や資材高騰などで景況感が後退、不動産業も悪化した。
 人手不足を示す数値も製造業で大きくなり、非盛業ではさらに上回るなど深刻さを増している。
 今年6月に向けての先行きについては製造業では改善、非製造業では悪化を見込む。製造業の改善見込みは、ダイハツ不正認証問題による生産停止から再開への期待を織り込んでいるとみられる。
 長谷川圭輔支店長は「山陰の景況感は前回より落ち込んだとはいえ、プラスの領域にある。ただ、製造業で全国との業績格差が大きくなっている。物価上昇で実質賃金は目減りしてきたが、今年の春闘で賃上げが物価上昇を上回れば消費後退を防げる」と話している。
 日銀がマイナス金利政策を解除した山陰経済への影響については「緩和的な金融環境は続いており、金利が急激に上がることはない。ただ、コロナ経済対策を含め、金利負担を無視できた時代は終わりを告げた。これからは金利を意識した経営に舵を切り替える必要がある」として「金利のある世界」を強調した。
 調査は、山陰両県の企業174社を対象に今年2月から3月にかけて実施。うち99%に当たる173社から回答を得た。業況判断DIは、業績を「良い」と回答した企業割合から「悪い」と答えた企業割合を差し引いた数値。