民間の信用調査会社、帝国データバンク松江支店は、県内企業の本年度の賃上げに関する意識調査の結果を公表した。それによると、ベースアップなど本年度賃上げを実施する企業は全体の5割以上で、近年で最高だった前年度に次ぐ割合だった。物価高や人手不足に対応するため、賃上げの機運が県内企業にも浸透していることをうかがわせた。
 調査は、今年1月、県内に本社を置く273社を対象に実施。うち36%に当たる99社から回答を得た。
 それによると、本年度賃上げを実施すると答えた企業は全体の55%に当たる54社。前年度の61%を6ポイント下回り、4年ぶりに前年度を下回った。前年度が近年では最高の割合だったため、頭打ちの傾向が出たとみられる。賃上げを中心に本年度、全体の7割以上の企業が総人件費の増加を見込んでいる。
 一方で賃上げを実施しないと回答した企業は12%に当たる12社で、前年度より2ポイント上昇、「分からない」は3分の1の33社だった。
 賃上げの柱となるベアを実施する企業の割合は、全体の50%で2010年度以降では昨年度に次いで2番目に高かった。 
 賃上げの理由としては「労働力の定着・確保」が85%と最も多く、次いで「従業員の生活を支えるため」80%、「物価動向」54%、「採用力の強化」30%が続いた。
 賃上げをしない理由では「業績の低迷」、従業員の研修費など「人的資本の増強」の順で多かった。
 全国調査の結果では60%の企業が賃上げを予定しているのに対し、島根県が55%と下回っている理由について同支店は「原材料の高騰などの価格転嫁が全国と比べて進んでいないためでは」とみている。
 調査結果について同支店の渡辺聡支店長は「物価高騰などで賃上げの必要性の声が高まり、企業としても人材不足に対応するため、賃上げの機運は浸透してきているのでは」と話している。