宿泊税導入について報告書を上定市長に手渡す田中会長(左)=12日、末次本町の役所 内のホテルなど宿泊施設利用者から徴収する宿泊税導入の是非を審議してきた「新たな観光財源検討委員会」(会長・田中治大阪府立大学名誉教授)は12日、「市内の観光振興のために新たな財源が必要」とする報告書を取りまとめ、上定昭仁市長に提出した。宿泊税導入を妥当とする内容で、報告書を受けて市は今後、市民から意見を募るパブリックコメントなどを経て2025年度中に導入する方針。実現すれば、全国で10番目の自治体となる。 
 報告書によると、宿泊税は市内の宿泊施設に泊まる客を対象に1人1泊一律200円を宿泊料金に上乗せして徴収し、税収の使い道を観光振興に限定する目的税とする。宿泊料金が一定金額以下の場合には課税しない免税点は設けないが、修学旅行など教育旅行には課税しない。初年度の税収は3億円程度を見込んでいる。
 税率について既に導入している自治体の中には宿泊料金に応じて差をつけているところもあるが、検討委員会の田中会長は「税の徴収業務に当たる宿泊業者の負担を軽減するため、一律にした方が適当」と述べた。
 この日、上定市長に報告書を提出した田中会長は「の観光振興のための新規事業などに税収を充ててほしい。税という性格上使い道には、公共性や公益性が求められる。宿泊業者や税金を納める宿泊者の納得と理解を得てほしい」と注文をつけた。
 これに対し、上定市長は「報告書を重く受けとめる。市観光戦略プラン推進のため、必要な事業に新たな財源を使わせてもらい、松江の観光ブランドに磨きをかけていきたい」などと応じた。
 報告書を受け市は今後、パブリックコメントや市内宿泊業者らの説明会などを経て来年度中に関連条例を制定する方針。
 市内にはホテルなど宿泊施設が160施設あり、観光宿泊者数はコロナ禍前の2019年に211万人。観光消費額は年間645億円。
 検討委員会は学識経験者や市内の経済団体代表、宿泊業界代表ら10人の委員で昨年2月設置。以来4回会合を重ねてきた。宿泊業者らから反対意見や慎重論が出なかったどうかについて田中会長は「そういう意見はまったくなかった」と話した。
 宿泊税の導入を巡っては松浦正敬前市長時代から10年来議論されてきた。これまで宿泊業者らからは東京や京都がオーバーツーリズム(観光公害)を抑制する目的なのに対し、そこまで至っていないが導入する以上使い道を明確にすべきだとして慎重論も出ていた。

<写真:宿泊税導入について報告書を上定市長に手渡す田中会長(左)=12日、末次本町の役所>