トラックやバス運転手、建設業、医師などに残業時間の上限規制が今年4月から適用されることによる「2024年問題」について県内企業の7割近くが悪い影響を受けると懸念していることが、民間信用調査会社、帝国データバンク松江支店の調査で分かった。特に運送業の残業時間が規制される影響は大きく、物流コストの上昇や人手不足に拍車がかかるなど地域経済にマイナス効果を与える可能性も無視できなくなっている。
 調査は、県内に本社を置く275社を対象に昨年12月から今年1月にかけて実施、このうち32%に当たる89社から回答を得た。
 それによると、残業時間の上限規制によって全般に「悪い影響がある」と答えた企業は全体の66%に上り「影響はない」と回答した19%を大きく上回った。特に物流に関しては73%が「悪い影響がある」と懸念し、「影響はない」15%、「分からない」14%を引き離した。
 どんな影響が予測されるかを聞いたところ「物流コストの上昇」が66%と最も多く、次いで人手不足の深刻化、人件費の増加、配送スケジュールの見直し、建設コストの上昇、従業員の負担増加などが続いた。
これらの問題に対する各社の対応を聞いたところ、65%の企業が何らかの対応を検討している一方、26%は「特に考えていない」とし、「分からない」も9%あった。
 対応の方法としては「運送費値上げを受け入れる」が45%と最も多く、「運送スケジュールの見直し」「荷主と運送業者の連携強化」「運送業者の確保」などが続いた。
 一方、特に対応を考えていないとした企業の理由としては「実際に問題が生じた時点で考える」と先送りを決め込む企業が半数近くに上り、「自社だけでは対応できない」「どうすればいいか分からない」と困惑する企業も合わせて40%。「これまで通り問題は生じない」と楽観する22%を上回った。
 調査結果について渡辺聡支店長は「どう対応していいか戸惑う企業も多く、全般に備えが遅れている。県内の運送業の場合、2次、3次の下請け業者も多く親企業が荷主との直接交渉の結果、値上げが認められても価格転嫁の波及が遅れる可能性もある」と話している。