山陰合同銀行(本店・松江市魚町、山崎徹頭取)は、山陰両県の主要企業を対象に今春の賃上げ実績と来春の賃上げ見通しについて聞いた調査結果を公表した。人手不足や物価高を反映して賃上げに前向きな企業の姿勢が目立ち、人材確保のため、賃上げを迫られる実情を浮き彫りにした。
 調査は、今年8月から9月にかけて山陰両県の主要企業1207社を対象にアンケート方式で実施。うち44%に当たる527社から回答を得た。
 それによると、今春賃上げを実施した企業の割合は、全体の85%に上った。賃上げの方法では、勤務年数に応じて給与を引き上げる定期昇給を実施したのは71%、基本給を引き上げるベースアップ実施は56%。通常は定期昇給にベアが加わるため、同時実施したとみられ、このうちベア平均は2・86%だった。
 毎年定期的に実施する調査ではないため、過去との比較はできないが、連合島根が公表した今年の春闘の定期昇給とベアを合わせた平均賃上げ率2・51%(金額で6175円)をベアだけで上回った。連合島根公表分の今年の賃上げ率が2003年以降最高だったのを考慮すると、近年にない大幅賃上げとなったとみられる。
 賃上げと業績との関係では、「業績は改善しなかったが、賃上げを実施した」が53%で、「業績が改善したため、実施した」32%を上回った。少しでも業績が悪化すると「賃上げどころではない」としていた時期と比べると、企業の姿勢は様変わり。人材を確保するため、業績にかかわらず賃上げを迫られたことがうかがえる。
 来春の賃上げ見通しでは、72%の企業が賃上げを実施すると答え、その方法では定期昇給68%、ベア予定44%の割合。ベアによる平均上げ率は2・54%と今年より低くなるが、慎重になりがちな先行き見通しとしては強気の見通しを立てている。
 調査結果について同行地域振興部は「人手不足と物価高の影響が反映されたとみられるが、賃上げを一過性に終わらせず持続していくことが地域経済の好循環につながる」と話している。