覚書締結の後、記念撮影に応じる松江商工会議所の田部会頭(左)と日本政策金融公庫松江支店の天崎支店長=27日、松江市母衣町の松江商工会議所 政府系金融機関の日本政策金融公庫(日本公庫)松江支店と松江商工会議所は、事業承継支援で連携することになり、27日、その覚書を締結した。後継者がいないなどの理由で事業を譲渡したい事業主を松江商議所が公庫に紹介、公庫側は全国支店ネットワークを通じて事業を引き継ぐ相手を探し出す。県内では初めての試みで、経営者の高齢化などで増える事業所の休廃業の抑止を目指す。
 県内では、国の委託を受け、松江商工会議所が中心となって事業承継・引き継ぎセンターを設置。弁護士や税理士など専門家も加わって相談に乗っている。2022年度は483事業所から相談があり、このうち77件の事業承継が実現した。
 後継者難で事業を譲りたいとする相談が、M&A(企業の合併・買収)などを通じて引き受けたいとする要望を上回り、引き継ぎ手の確保が課題となっている。事業譲渡側が抱える負債処理の問題も絡んで県内の事業承継はあまり進んでいない実情という。
 このため、全国に中小・零細企業の取引先を持ち、経営情報を蓄積している公庫に事業の引き継ぎ手を紹介してもらうことになった。事業を譲りたい側と引き継ぎたい側が登録し、お互いのマッチング(組み合わせ)を公庫と同商議所が支援する。
 この日は、松江市母衣町の松江商議所で覚書の締結式が行われた。松江商議所の田部長右衛門会頭は「事業承継は喫緊の課題だが、その意識が事業主に薄い。M&Aなどを通じてきちんとやっていく必要がある」、日本公庫松江支店の天崎渉支店長も「地域に必要とされる企業を将来につなげていきたい」などとそれぞれ話した。
 帝国データバンク松江支店の調べによると、昨年1年間の県内事業所の休廃業・解散は340件で前年比10%増え、3年連続で増加。小売りやサービス業を中心に過去5年で最多となった。

<写真:覚書締結の後、記念撮影に応じる松江商工会議所の田部会頭(左)と日本政策金融公庫松江支店の天崎支店長=27日、松江市母衣町の松江商工会議所>