県内で今年に入り企業倒産が急増している。民間信用調査機関、帝国データバンク松江支店の調べによると、今年1~8月の県内企業倒産は、34件、負債総額50億円。件数で2020年、2022年のそれぞれ1年間を上回り、先行きも増加が懸念されている。
 中小企業向けの持続化給付金や無利子・無担保のゼロゼロ融資、全国旅行支援など政府の一連の新型コロナ禍対策が終了し、「支援切れ」となる中で、原材料高騰や人手不足などで経営を維持できなくなっていることが要因とみられる。
 同支店の調査によると、今年8月の県内の企業倒産は6件、負債総額8億6000万円で、前月に比べ件数で3倍、負債総額は37%増えた。前年同月の倒産はゼロだった。
 県内の今年1~8月までの累計倒産34件は、前年同期と比べ16件増え、22年の28件、20年32件の年間倒産件数を上回った。既に21年の34件と並ぶ。8月までの倒産件数としても2016年以降最多となり、50億円の負債総額も21年の年間負債総額46億円を上回った。このうち、コロナ禍で売り上げが落ち込むなどコロナ関連倒産は3分の2に当たる22件。
 新型コロナの感染が拡大した20年から22年まで県内で倒産が比較的落ち着いていたのは、政府のコロナ対策で緊急避難的に経営が下支えされていたため、とみられる。コロナ禍で売り上げが落ちこんだ中小企業に当面の運転資金を支給したり、無利子無担保で融資したりしたほか、宿泊施設や飲食店などを対象に需要を喚起する政策が実施された。
 しかし新型コロナが感染症法上の5類に移行するなど落ち着いてきたのに伴い、政府の支援も手仕舞いとなり、今年春からはゼロゼロ融資の返済が本格化するなど企業経営の自立化が求められている。
 今年の県内の企業倒産の大半は、法的に破産手続きを開始して事業を停止、従業員を解雇する消滅型。民事再生など債権者の同意を得た上で債権をカットしながら、経営再建を目指す再建型はほとんどない。
 同支店は「コロナ禍の傷が十分癒(い)えないうちに、仕入れ価格の上昇や人手不足の逆風にさらされ、先行きが見通せないまま事業を断念するケースが多い。今後の動向を注視していく必要がある」と話している。