今年の県内の最低賃金を決める県最低賃金審議会(会長・藤本晴久島根大准教授)が1日、松江市向島町の島根労働局で開かれ、労働側と使用者側の協議が本格化した。今後数回議論を重ねて8月中旬までに結論を出し、同労働局の宮口真二局長に答申する予定。新しい県最賃は、今年10月から適用される。
 厚生労働省の中央最低賃金審議会が先月、今年の最低賃金を時給換算で過去最大の全国平均41円引き上げて1002円とする目安額を示した。最賃は、目安額を参考に各都道府県で決めることになっており、目安額は賃金や物価水準を基準にAからCの3区分された地域ごとに示している。現行857円の最賃が適用されている島根県が入っているB区分には、目安額で時給40円の引き上げが示されている。目安通り引き上げられると、時給897円となる。 
 目安提示後初めて開かれたこの日の審議会で労働側は、賃金が低いことが若者の県外流出を招いているのに加え、最近の物価高で最賃レベルの賃金で働いている県民の生活を圧迫している、として引き上げの切実さを強調。時給900円から1000円を目指すという声も出た。
 これに対し、経営者を代表する使用者側は、高騰する原材料の価格転嫁が思うように進んでいない上、コロナ対策で借りた無利子無担保のゼロゼロ融資の返済が本格化するなど経営が苦しくなっている実情を訴えた。人手不足に対応するため、最賃引き上げの必要性は認めるが、上げ過ぎると、事業の存続が危うくなると懸念する声もあった。
 労使の中間的立場にある公益委員を代表して藤本会長は「目安額が過去最大の引き上げとなるなど最賃を巡る状況は厳しくなっているが、お互いが納得できる決着を目指したい」と締めくくった。
 この日は、労使とも具体的な引き上げ幅の議論には踏み込まず、3日に予定されている次回会合以降に持ち越した。