県などが出資している公益社団法人、県林業公社(松江市黒田町、松尾秀孝理事長)の定時社員総会が23日,松江市黒田町の県土地改良会館で開かれ、2022年度事業報告・決算案など3議案を原案通り承認した。決算では、県などからの長期借入金の利息負担を除く事業収支は、前年度に続き2年連続で黒字となった。経営再建計画を上回って木材販売収入が伸びたのが主因で、課題となっている経営再建が進み始めた。
 22年度決算によると、スギを中心とする木材の販売収入と県からの補助金などを合わせた収益は、7億8000万円で前年の21年度と比べて9200万円増。伐採、搬出費用などを差し引いた事業収支は、1億3800万円の赤字となり、前年度と比べると、赤字額は2300万円増えた。赤字額のうち、借入金利息1億6200万円がなかったとすると、2400万円の黒字となり
、初めて黒字に転じた前年度(6200万円の黒字)に続き2年連続で黒字となった。この結果、22年度末の長期借入金残高は、548億8000万円と計画を4000万円下回った。借入金の内訳は、県391億円、政府系金融機関の日本政策金融公庫166億円など。
 22年度は、合板や木質バイオマス向けチップ材の需要が旺盛で木材価格も堅調だったことから、スギなどの伐採、販売が順調に進んだ。コロナ禍で木材の海上輸送が滞ったことなどで価格が高騰する「ウッド・ショック」の恩恵は一段落したが、その反動で暴落する事態は避けられている。
 県内の森林は約52万ヘクタールで県土の80%を占め、大半は民有林であり、育成的林業の歴史は浅く、資源構成は極めて貧弱。こうした背景のもと、山林所有者に代わって、県からの補助金と借り入れ金などで造林を手掛ける※「分収造林方式」にを推進する目的で、1965(昭和40)年に設立されたのが、この林業公社。社員は、県、市町村と県森林組合連合会。事業資金として県などからの借り入れは続いているが、14年から始めた伐採と木材販売が軌道に乗り始めたことで借入金残高は計画を下回り、負債の膨張に歯止めがかかった。
 22年度事業活動の結果について山内寛之専務理事は「県産材の需要は増えており、木材価格も堅調に推移するなど林業を取り巻く環境は一時に比べ改善している。森林組合や素材生産業者ら林業関係者らと連携しながら公社の経営再建に取り組んでいきたい」と話している。

 ※分収造林事業は、山林を経営する余裕がない山林所有者に代わって、県や市町村が出資する林業公社が造林し、木材販売収入を山林所有者らと分け合う制度。林業は、植林してから樹木が生長して伐採できるようになるまで数十年かかる。それまで収入がないため、借入金や補助金で育林管理費を賄っている。 しかし、安価な外材輸入が増えるなど木材価格の下落で木材を販売しても採算が取れない状況が続いたため、同公社では伐採期を延長するなどの対応を含めた経営再建計画を進めている。