消費税に関して今年10月から導入されるインボイス(適格請求書)制度について山陰両県の企業がどう受け止めているか、帝国データバンク松江支店がアンケートしたところ、7割以上が制度の内容を理解したうえ準備を進めていることが分かった。
 その一方で「制度が複雑で、事務手続きが煩雑」「零細企業にとっては死活問題」など反発する声もあり、政府の説明不足を指摘する意見も少なくない。
 インボイスは、商品やサービスの取引に伴い売り手の事業者が買い手の事業者に発行する請求書のひとつ。商品ごとの価格や税率などが記載され、消費者が最終的に負担するまで取引段階ごとに転嫁される消費税を公正に追跡するのが狙い。
 消費税課税事業者は、売り上げにかかった消費税から仕入れにかかった消費税を差し引いた税額を納めるが、取引先からのインボイスを提示しなければ、仕入れ税額控除を受けることができず税負担が重くなる。
 税額控除を受けるためには、今年3月までに適格請求書発行事業所であることを示す登録を最寄りの税務署に申請する必要がある。 調査では「インボイス制度を理解している」と答えた企業は、全体の73%。「理解していない」と答えた企業20%、「分からない」8%だった(数字は小数点以下四捨五入)。同じ調査で「理解している」企業が全国で77%だったのと比べると、山陰はやや少ない。
 適格請求書発行事業所への登録を既に申請したのは、55%と半分を超え、登録期限の3月末までに申請するとした23%を合わせて78%の企業が登録する見込み。
 登録事業者でなければインボイスを発行できないが、税額控除を受けるため、取引先が登録事業者であるかどうか確認している企業は昨年10月の調査時点では4%に過ぎなかった。ただ制度がスタートする今年10月までに登録状況を確認する意向の企業は73%と、多くの企業が取引先の動向に関心を寄せている。
 消費税が免除されている課税売上高年間1000万円未満の零細事業所はインボイスを発行できない。このため、零細事業所は取引先から税負担軽減のため、発注を控えられる恐れがある。インボイスを発行しない零細事業所とは取引しないと答えたのは10%にとどまり、一定割合で控除を認める経過措置期間の2029年9月までを含め、51%が取引を続けるとしている。ただ、「分からない」とする企業も4割近くあり、零細事業所への影響は予断を許さない。
 調査結果について同支店は「インボイス導入は企業にとって事務負担が増えるだけでメリットはない。決まったことなので仕方なく準備を進めている実情。個人事業主を含めた零細事業所にとっては受注を失うリスクなど影響が大きいのでは」と話している。
 調査は、山陰両県に本店を置く383社を対象に昨年10月に実施。37%に当たる143社から回答を得た。