理解度の不足が主因

 県内の中小企業や小規模企業の振興を図る県の基本計画について検証などをする「県中小企業・小規模企業振興推進協議会」が19日松江市で開かれ、県内の経済団体代表や学識経験者らから意見を聞いた。県内中小企業のデジタル化の遅れが指摘され、経営者らの意識の低さなどの課題が明らかになった。
 協議会では、コロナ化でテレワークやネット通販などビジネスのデジタル化が進む中、県内中小企業の取り組みは遅れており、帝国データバンクの調査でデジタル化に取り組んでいる企業の割合は13・7%と全国平均の15・7%より低いことが県側から報告された。
 デジタル化の中身は、書類を減らしたり、オンライン会議、SNSを活用した情報発信など業務効率化が中心で、既存製品の高付加価値化や新製品、新しいサービスを創出するなど本格的な取り組みはまだ少ない。
 デジタル化の遅れは、理解度の不足が主因。「IT関連用語を知らない」「意味が分からない」と答えた企業が最も多く、「どこから手を付けていいか分からない」が続く。そもそも必要性を感じていないと答えた企業もあった。カタカナ語や横文字の「業界用語」に抵抗感を覚える経営者も高齢になるほど多い。  
 ITエンジニアやプログラマーなどデジタル業務に対応できる人材不足も深刻で、外部から人材を派遣してもらうか、研修などを通じて自社で人材を育成するか、企業側も対応を迫られている。
 出席者らからは「自社の経営課題を発見することが重要で、デジタル化はその手段」「経営者がその気にならなないと、全社的なデジタル化は進まない」などと指摘する声が出た。
 これに対し、県側は「デジタルと経営を総合的に理解できる人材の育成が必要」「システムを十分理解していないため、処理可能な業務を知らない人もいた」などと答えた。
 県の中小企業デジタル化推進事業については人材育成やSNSを通じた販路拡大、AI(人工知能)を組み込んだ新製品の開発支援などを展開しているが、多岐にわたる支援の中身がよく理解できないため、どのメニューを選んでいいか戸惑う企業も少なくない実情という。
 協議会は、県が制定した中小企業・小規模企業振興条例に基づき策定された基本計画について意見を聴いたり、進捗状況を検証したりするなどのため開催。2020年度、21年度は新型コロナウイルス禍で中止され、3年ぶりに開かれた。