潜在保育士について

潜在保育士とは、資格を持っているのに保育園や幼稚園など資格を活かした仕事をしていない人のことです。
厚生労働省の資料によると、全国の保育士資格保育者の数は約120万人いて、そのうち実際に資格を活かした仕事に就いている人は約40万人しかいません。
つまり、有資格者の2/3にあたる80万人が潜在保育士になっています。
保育の仕事は重大な責任と正しい保育スキルを要するため、有資格者でないと働けない仕事です。
資格取得者をサポートする取り組みも行っていますが、資格を持っていても保育園等で働こうとしない人が多い課題があります。
潜在保育士のパターン
潜在保育士は、一度就職したけど退職して再就職しない人と、最初から学校卒業後に保育士の仕事に就職しない人がいます。
厚生労働省のデータを見ながら、原因とパターンを見ていきましょう。
- 資格取得者の16.9%は資格を活かした仕事に就かない
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厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課調べによると保育士施設で資格を取得した卒業生のうち、16.9%がその他(未就職含む)の一般職に就職しています。
養成施設に入って保育士になろうとしている人は増加傾向にあるのですが、養成施設で理想と現実の違いを実感して、資格は取るけど保育士の仕事に就こうとしない人が多いです。
- 保育所以外の就職先が人気
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保育士養成所で資格所得をした卒業生のうち、31.5%が児童福祉施設、障害者施設、老人施設、幼稚園等に就職しています。
保育所への就職者は51.7%ほどで、卒業生のうち、約半数しか保育所で勤務していません。
- 潜在保育士の大半は既婚者&子供あり
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厚生労働省が800名の有資格者を対象に行ったアンケートでは、225名が潜在保育士でした。
潜在保育士の中で75%は配偶者あり、69%は子供ありと回答しています。
女性が多い仕事なので、結婚、出産、育児をきっかけに仕事を離れることは仕方のないことですが、保育士は子育てが落ち着いても復帰しない人が多いです。
女性比率が高くて資格が必要な看護師の場合は、一般的な仕事に比べて賃金が高いので、結婚しても復帰する人が多いです。
保育士の場合は、資格を必要としない一般的なパートや事務職と待遇がそれほど変わらないため、結婚や出産で一度仕事を離れると、そのまま復帰せずに専業主婦になったり、他の仕事へ再就職する方が多いです。
年代別の再就職しない理由
厚生労働省の行った調査では、年代別に潜在保育士が再就職しない理由をまとめています。
- 20代・30代:求職しているが条件が合わない
→ 賃金・勤務時間に不安 - 40代:就職に不安がある
→ 自身の育児、親の介護との両立に不安 - 50代・60代:就職する必要性を感じない
→ 体力的な不安
保育士を目指す人は、子供と触れ合いながら社会貢献できる業務内容に魅力を感じています。
しかし、実際に保育士として働くなど実態を知ってしまうと、自身の環境の悪さを懸念して、再就職に消極的になってしまうようです。
20代、30代では求職しているが条件が合わないという意見が多く、就職する気はあっても他の求人と比較して保育士の仕事を離れてしまう方も多いです。
潜在保育士が増える要因
主に次の3つの要因があります。
- 家族
→ 家事、育児、介護、旦那の転勤など - 保育園とのずれ
→ 潜在保育士は日中の短時間勤務希望者が多い。保育園は早番、遅番をできる人を求めている - モチベーション
→ 一般事務職より給料が低い、公立と私立で賃金格差があり公立で働けないのであればバカらしく感じる、体力的にキツい
国や自治体は潜在保育士を復職させるために、勤務時間の短縮化や環境の改善など様々な取り組みを行っています。
しかし、仕事の特性上、必ず早番・遅番が必要になる職場の環境や、予算や売上の面で賃金を改善するにも課題が多く、なかなか環境の改善や潜在保育士の求めている仕事が見つからないのが現状です。