公的機関による制度

公的機関におけるリバースモーゲージの発祥は、1981年に東京都武蔵野市が導入した「福祉資金貸付制度」であると言われています。(現在は終了しています。)
はじめは自治体レベルで行われた制度でしたが、現在では厚生労働省が全国の社会福祉協議会を通じて行う貸付制度にまで発展しました。
公的機関による制度のため、安全性に富んだ好条件にて利用できる一方で、年齢と所得の制限や物件の種類によっては利用ができないといったデメリットもあります。
公的機関によるリバースモーゲージ制度の概要をまとめましたので、是非ご覧ください。
不動産担保型生活資金の概要
不動産担保型生活資金とは、厚生労働省主導のもと都道府県社会福祉協議会(受付は市町村社会福祉協議会)が提供するリバースモーゲージで、2002年に制定されました。
所得が低い高齢者世帯を対象に、年利3%又は長期プライムレート(2019年7月0.95%)のいずれか低い利率が適用されるため、民間のリバースモーゲージより好条件での借入が期待できます。
貸付対象者
以下5つの要件全てに該当する方が当該制度の対象となります。
1.借入申込者が単独で所有(配偶者共有含む)する不動産に居住している
2.不動産に賃借権、抵当権等が設定されていない
3.配偶者又は親以外の同居人がいない
4.世帯の構成員が原則として65歳以上
5.借入世帯が市町村民税の非課税世帯程度の世帯
借入条件
貸し付けの条件は、以下の通りです。
限度額 | 居住用不動産(土地)の評価額の70%程度 |
借入期間 | 貸付元利金が貸付限度額に達するまでの期間又は借受人の死亡時までの期間(最長で死亡するまで無期限) |
利用方法 | 申請することで1ヶ月30万円以内の短期借入を限度額の範囲内で繰り返す(臨時増額可) |
金利 | 年利3%か長期プライムレートのいずれか低い利率 |
償還期限 | 借受人の死亡など貸付契約の終了時 |
担保 | 居住する不動産に根抵当権等を設定 |
保証人 | 推定相続人の中から連帯保証人1名を選任 |
生活保護者はさらに優遇
生活保護者の方は「要保護世帯向け不動産担保型生活資金」という制度を活用することによって、より幅広い不動産を対象にした借入が可能です。
具体的には、通常の不動産担保型生活資金に比べて以下の違いがあります。
集合住宅でも利用可能(評価額の50%程度)
推定相続人による連帯保証人が不要
生活扶助額の1.5倍以内が月々の借入限度額(月々30万円に設定された通常の不動産担保型生活資金より低くなる)
※金利、貸付期間などの基本条件は不動産担保型生活資金と同じ
民間との違いやメリット・デメリット

公的機関によるリバースモーゲージの不動産担保型生活資金は、前述した通り長期プライムレートによる超低金利での借入が可能です。
現在は歴史的超低金利時代になっているため、2019年現在、長期プライムレートは1.0%前後の水準で安定して推移しています。
なお、民間のリバースモーゲージは一般的に住宅ローン・不動産担保ローンの基準金利(変動)が適用利率になり、2019年現在の平均金利は2.5%前後です。
さらに、日銀フォワードガイダンスによると、2020年春までは現在の超低金利政策を維持する見込みとなっており、要件を満たすのであれば同制度を活用するのが望ましいでしょう。
公的機関・民間企業の違いまとめ
申込年齢 | 公的機関は65歳以上だが、民間は55~60歳を下限年齢に設定しているケースが多い。 |
不動産の種類 | 公的機関は生活保護世帯を除いて戸建てのみ。民間はマンションでも利用可能 |
使途 | 公的機関は生活費および住み続けるためのリフォーム費用に使途が限定される。民間は老人ホームの費用や家の建て替えにも使える。 |
柔軟性 | 担保不動産の評価額や初回借入までのスピード対応など、民間の方が柔軟な対応が期待できる傾向にある。 |
所得 | 公的機関は住民税非課税世帯が対象。民間は所得制限無し。 |
居住者 | 公的機関は子供と同居だと利用できない。民間は子供と同居でも利用できるケースがある。 |
築年数 | 民間の場合、これから取得する不動産であってもリバースモーゲージ住宅ローンで借入することが可能。 |