決めのポーズからすかさず右の人さし指を高らかに突き上げたとき、羽生はもう確信していた。何かをほえた。「勝ったと思った」。耐えてくれた右足首を両手でそっとなでた。男子で66年ぶりの五輪連覇はただの快挙ではない。ここまでの道が苦し過ぎたから、熱いものがこみ上げた。
 SP首位も差は4点余り。「この結果はこれからの人生でずっとつきまとう。勝たないと意味がない」と考え、4回転はループを入れず、2種類にとどめた。序盤にサルコー、トーループを完璧に決めて3点満点の加点。これで流れがきた。
 氷上に戻ってまだ1カ月で、演技時間の長いフリーは体力に不安があった。後半、4回転トーループの着氷が乱れて単発になったが、続くトリプルアクセルを3連続につなげて取り返した。最後は3回転とはいえ、負傷を誘発したルッツ。軸が大きく傾いて右の爪先から降りた。足首に負担がかかりそうな着氷だったが、何とかこらえた。
 初出場で金メダルに輝いたソチ五輪からの4年間を「けがばっかり」と振り返る。14年中国杯で他の選手と激突し、腹部や頭部、下顎などを負傷。その後も尿膜管遺残症で手術を受け、右足首や左足甲も痛めた。そして、昨年11月の右足首靱帯(じんたい)損傷。「フィギュアスケートというスポーツに、それだけ勇気を持って恐れずチャレンジしてきたということだと思う」と言った。
 自分より若い金博洋や宇野昌磨、ネーサン・チェンに触発されて4回転の種類と本数を増やしてきた。ループを世界で初めて成功させ、ルッツにはけがが付いてきた。最後の最後に手負いの自分に連覇をもたらしてくれたのは、世界歴代最高点を出した2シーズン前と同じサルコーとトーループ。難しいものに挑んできたからこそ、この2種類が簡単だと思えて自信を持てた。「やっぱり一つとして無駄なことはない」と実感を込めた。
 メダリストが並んだ記者会見で、もう次の2022年北京五輪のことを聞かれた。「この4年間も(男子の)レベルが相当上がって、何度も何度も置いていかれた。3連覇か。そんなに甘くないのは知っている」と答えた。今はまず足首を休めて、静かな喜びにただただ浸りたい。(時事)