時事通信社は2017年の国内の十大ニュースを選定した。それぞれ次の通り。

 第一位 退位、2019年4月末に
<写真:皇室会議に臨む議長の安倍晋三首相(奥中央)ら=12月1日午前、宮内庁特別会議室> 政府は12月8日の閣議で天皇陛下が退位される日を「2019年4月30日」と定めた政令を決定し、13日に公布した。同年5月1日に皇太子さまが新天皇に即位する。即位と同じ日に改元も行われ、平成は30年と4カ月で幕を下ろすことになる。天皇退位は1817年の光格天皇以来約200年ぶりで、現行憲法下では初めて。新元号は来年中に発表される方向だ。
 今年6月に成立した退位を可能にする特例法は、施行日に天皇陛下が退位し、皇太子さまが直ちに新天皇に即位すると規定。特例法に基づき、12月1日に約25年ぶりの皇室会議を宮内庁で開き、三権の長や皇族らの意見を聴いた。天皇・皇后両陛下の退位後の称号は「上皇」「上皇后」、秋篠宮さまは皇位継承順位第1位の「皇嗣(こうし)」となる。
<写真:皇室会議に臨む議長の安倍晋三首相(奥中央)ら=12月1日午前、宮内庁特別会議室>

 第二位 衆院選で自民大勝、民進が分裂
 安倍晋三首相の政権運営への評価が最大の争点となった第48回衆院選は10月22日に投開票され、自民党が公示前勢力に迫る284議席を獲得して大勝した。投票率は53・68%で、戦後最低だった前回に次ぐ低水準。11月1日に召集された特別国会で第98代首相に指名された安倍首相は同日夜、全閣僚を再任し、第4次安倍内閣を発足させた。
 衆院選に先立ち、小池百合子東京都知事は希望の党を結成。野党第1党だった民進党は公認候補を擁立せず、希望に公認を申請する異例の方針を決めた。だが、小池氏は憲法観などの不一致がある場合「排除する」と述べ、全面合流を拒否。枝野幸男元官房長官らは立憲民主党を結成、その他は無所属で出馬と、民進党は3分裂した。小池氏の発言が響いて希望は失速、立憲は躍進した。

 第三位 森友・加計・日報、政権揺るがす
 学校法人「森友学園」への国有地格安売却と「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、安倍晋三首相や周辺の関与の可能性が疑惑として浮上、国会で問題化した。南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報問題は稲田朋美防衛相辞任に発展。政権の足元は揺らぎ、内閣支持率は急落した。
 国が森友学園に売却した国有地は、同学園が開学を予定した小学校用地。首相夫人の昭恵氏が名誉校長に就任していた。首相が関与を否定したことから野党は「役所の忖度(そんたく)があったのではないか」と追及した。加計学園問題では、獣医学部新設は「総理のご意向」と記された政府の内部文書の存在が発覚。防衛省では、廃棄されたはずのPKO派遣部隊日報の保管が明らかになり、文民統制の面で課題を残した。

 第四位 「ものづくり」信頼揺らぐ
 日産自動車、神戸製鋼所などで、製造現場の不正行為が相次ぎ発覚した。日産とSUBARU(スバル)では資格のない従業員が完成車の検査を行っていた。神鋼は品質データの改ざんなどを繰り返した。同様の不正は、素材大手の三菱マテリアルや財界総理と呼ばれる経団連会長を出す東レの子会社にも飛び火。産業界に衝撃が走った。
 一連の不正で、ルールを無視したずさんな品質管理や、安全性に対するモラル低下があらわになった。こうした製造現場の実態を把握してこなかった経営陣にも厳しい目が向けられ、企業統治の在り方が問われた。神鋼グループの工場では、日本工業規格(JIS)認証の取り消しや一時停止が続出。日本が世界に誇ってきた高品質な「ものづくり」への信頼が大きく揺らいだ。

 第5位 アパートに9遺体、男を逮捕
 神奈川県座間市のアパート一室で10月末、行方不明者の捜索をしていた警視庁の捜査員がクーラーボックスなどに入れられた複数の遺体を発見した。被害者は女子高校生3人を含む1都4県の15~26歳で、女性8人と男性1人。警視庁は住人の白石隆浩容疑者(27)を死体遺棄容疑で逮捕した。9人全員の殺害を認めており、同庁は殺人容疑で再逮捕した。
 被害女性はいずれも、インターネット上の交流サイトで自殺願望を書き込むなどしていた。白石容疑者はツイッターで「首吊(つ)り士」と名乗り、被害者らと接触。8月末以降、部屋に誘い込み、ロープで首つり状態にして殺害した。遺体は切断し、一部はごみとして捨てていた。「金目的」と供述しているが矛盾する点もあり、全容解明が待たれる。

 第六位 桐生、ついに9秒台
<写真:日本学生対校選手権の男子100メートル決勝で、日本選手で初めて10秒の壁を突破する9秒98を記録した桐生祥秀=9月9日、福井運動公園陸上競技場> 陸上の男子100メートルで、桐生祥秀(22)=東洋大=がついに10秒の壁を突破する9秒98を記録した。9月9日に福井市で開催された日本学生対校選手権。伊東浩司が1998年にマークした10秒00の日本記録を19年ぶりに0秒02更新し、日本選手で初めて9秒台の領域に踏み込んだ。
 これまで9秒台をマークしたのは大半が北中米やアフリカの黒人選手。アジア勢ではアフリカ出身でカタールに国籍を変更した2人と、2015年に9秒99を出した蘇炳添(中国)の計3人しかいなかった。桐生は13年に10秒01を記録してから期待を背負い、以後4年を費やして歴史的なタイムを手に入れた。ライバルたちも触発され、山県亮太(セイコー)が9月24日に日本歴代2位に並ぶ10秒00を記録。来季も相乗効果が期待される。
<写真:日本学生対校選手権の男子100メートル決勝で、日本選手で初めて10秒の壁を突破する9秒98を記録した桐生祥秀=9月9日、福井運動公園陸上競技場>

 第七位「共謀罪」法が成立
 「共謀罪」の構成要件を改め「テロ等準備罪」を新設した改正組織犯罪処罰法が6月15日、成立した。施行は7月11日。277の犯罪を計画段階で処罰可能とする内容で、政府は2020年東京五輪・パラリンピック開催に向け、テロ防止に必要と主張する。一方、野党や専門家は、捜査当局による恣意(しい)的な運用を懸念している。
 共謀罪創設は過去に3度廃案となったが、政府は今回、適用対象を「組織的犯罪集団」とし、物品の手配など「実行準備行為」を要件と定めた。だが、その定義は曖昧で、内心の自由への侵害や日常的な監視につながりかねないとの指摘がある。同法には自民、公明両党と日本維新の会などが賛成。与党は参院で、委員会採決を省略して本会議で可決させる異例の手法を用いた。

 第八位 九州北部豪雨で死者・不明41人
 7月5~6日を中心に台風3号と梅雨前線の影響で「九州北部豪雨」が発生し、福岡、大分両県で死者38人、行方不明者3人となった。3号は九州北部を横断し、気象庁は5日に両県に大雨特別警報を発表。大規模な土砂崩れや河川の氾濫が起き、大量の流木で家屋や鉄道の鉄橋などが流された。不明者の捜索が長引き、農林水産業に大きな被害が生じた。政府は激甚災害に指定し、自治体の災害復旧事業への補助率をかさ上げした。
 台風は5号が8月7~8日に近畿・北陸を縦断。秋にも日本列島への上陸が相次ぎ、18号が9月17~18日に九州南部と四国、近畿、北陸を縦断したほか、21号が10月23日に東海と関東を縦断した。総務省消防庁によると、死者は5号で2人、18号で5人、21号で8人に上った。

 第九位 将棋の藤井四段が29連勝
 中学3年生の最年少将棋棋士、藤井聡太四段(15)が6月、昨年10月のプロデビューから負け知らずで30年ぶりに歴代最多連勝記録(28連勝)を塗り替える29連勝を達成した。当時14歳ながら、「望外」「僥倖(ぎょうこう)」など難しい言葉を使うキャラクターも話題となり、対局中の食事内容まで報道される社会現象に発展した。
 これまでに中学生で棋士になったのは、今年引退し、「ひふみん」の愛称で親しまれている加藤一二三・九段(77)、十七世名人の資格を持つ谷川浩司九段(55)、前人未到の永世7冠を達成した羽生善治2冠(47)=竜王、棋聖=、永世竜王の資格を持つ渡辺明棋王(33)の4人。連勝が途切れた後も藤井四段は高い勝率を保っており、今後も偉大な先輩らを超える活躍が期待される。

 第十位 電通に有罪、働き方改革へ機運
 広告最大手の電通が10月、過労自殺した新入社員を含む4人に違法な残業をさせていた労働基準法違反罪に問われ、東京簡裁で罰金50万円の有罪判決を言い渡された。当初は検察側が書面審理の略式起訴を求めたが、簡裁は正式裁判を決定。公開の法廷で社長が謝罪し再発防止を誓う異例の展開をたどり、判決は「尊い命が奪われ看過できない」と指弾した。
 日本を代表する企業で起きた過労自殺は判決の1年前、母親の実名告発で明らかになり、会社の利益のため身を粉にして働く企業文化や取引慣行に疑問を投げ掛けた。政府が3月に策定した働き方改革実行計画では長時間労働是正策として「月100時間未満」の残業規制が打ち出され、「かつての『モーレツ社員』という考え方自体を否定していく」とうたわれた。