被災の消防団員ら奮闘

 <写真:避難で留守になった住宅地で、空き巣や不審者への警戒を呼びかける消防団の車両=12日午後、熊本県南阿蘇村> 地震から1カ月が経過した熊本県の被災地では、自らも被災した地元の消防団員らが精力的な活動を続けている。本業や損壊した自宅、家族の今後など心配の種は尽きない。それでも、地元の安全のため汗を流す団員の姿を見て、「自分も復興の手伝いをしたい」と立ち上がる住民も出始めた。
 「不審者の目撃情報が増えています。見掛けたら警察まで連絡をお願いします」。南阿蘇村の住宅地を消防団の赤い小型ポンプ車がゆっくりと巡回していた。「この家は人がいない」「この家は戻ったかな」。団員らは真剣な表情で、民家の様子に目を光らせた。
 県内では地震後、避難者宅を狙った空き巣が続発。自衛隊員を装った男が「震度7の地震が来る」と言って住民を家から出そうとしたケースもあり、南阿蘇村消防団では3時間おきに村内を巡回して警戒を強めている。団員の多くは農業や会社員など本業を持った地元民。避難生活を送る団員も多いが、今村輝宏副団長(44)は「地元のことは自分たちでどうにかしたい」と意気込む。
 西原村の第2分団副団長田中憲聖さん(41)も、自宅が地震で大きく傾き、家族9人で避難所に身を寄せている。本震が起きた4月16日未明は、消防団の仲間やOBとともに住民の救助に奔走。倒壊した家の中から助けを求める声を聞いては、がれきをジャッキで押し上げ、夜明けまでに7人を救出した。
 「1人助けたら次という感じで、無我夢中だった」。避難所にいる家族のことも心配だが、「消防団がいるから住民は安心できる」と活動に打ち込んでいる。
 こうした消防団の姿に胸を打たれ、地元の復興のために立ち上がった住民もいる。西原村の農業山本栄一さん(66)は持病のヘルニアのためつえが手放せないが、消防団が一生懸命に頑張る姿を見て、自主的に地区の交通整理を始めた。赤い誘導棒を手に、トラックや乗用車を次々にさばいていく。「これだったら自分にもできる」と力強く語った。

<写真:避難で留守になった住宅地で、空き巣や不審者への警戒を呼びかける消防団の車両=12日午後、熊本県南阿蘇村>